データ復旧の現場にいると、意外と多く寄せられるのが「HDDの品質って出荷先で違うの?」というご質問です。
今回は、HDDメーカーの製造から出荷までの流れの中で、どのように製品が振り分けられているのかをご紹介します。
メーカーは出荷前に「物理フォーマット」と品質検査を行う
HDDは製造後、出荷前に以下のような工程を経ます。
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ローレベルフォーマット(物理的セクタ構造の書き込み)
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不良セクタのスキャンと代替処理
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全セクタへの書き込み・読み出しによる整合性テスト
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長時間の通電検査・ベンチマーク試験
これらの検査に合格した製品のみが出荷されます。
出荷先に応じた「品質ランク分け」がある
メーカーでは、検査結果に応じてHDDを「用途別」に分類し、出荷先を振り分けています。
出荷先 | 特徴 | 品質レベル |
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エンタープライズ(サーバー/NAS向け) | 24時間稼働や高耐久を求められる用途。ファームウェアも専用調整されている | 非常に高い |
PCメーカー(OEM)向け | 一般PCに組み込まれる。パフォーマンスとコストのバランス重視 | 中程度以上 |
バルク/OEM品(PCパーツ店など) | パッケージなし、型番やファーム違い。一部は高品質基準に達しなかった個体も含む | 中~低 |
「OEM品」や「バルク品」に含まれるグレーゾーン
コンシューマ市場で販売されるバルク品やOEM品のHDDには、次のような特徴があります。
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外見は新品でも、出荷基準の違いによりファームウェアやエラーログ、SMARTの詳細情報が異なる場合があります。
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不良品ではないが、エンタープライズグレードとしては不適と判断された製品が回されていることも。
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HDDの型番末尾(例:-00AAX、-11BBXなど)で製造ロットや品質ランクの違いを読み取れるケースもあります。
データ復旧の立場からの見解
私たちデータサルベージでは、OEMバルク品のHDDからの復旧依頼を多く受けています。もちろん全てが劣悪というわけではありませんが、長期保存やビジネス用途には、品質評価の高いエンタープライズモデルを推奨しています。
まとめ
HDDの見た目が同じでも、内部の品質やファームウェア設定には大きな違いがあります。
用途に応じた選定を行うことで、データ消失のリスクを最小限に抑えることができます。
今後も、HDDやSSDの品質とリスクに関する情報を随時お届けしてまいります。