はじめに
ここ数年、ChatGPTやGrok、GitHub Copilotなどの生成AI(Generative AI)がエンジニアの作業を大きく支援するようになってきました。PythonやJavaScriptだけでなく、C言語のようなローレベルなプログラミング言語にも対応できるという触れ込みで注目を集めています。
一方で、SNSや開発コミュニティではこんな声もよく見かけます。
「AIはC言語のような古い言語には弱い」
「C言語のポインタやメモリ管理はAIには無理」
果たして本当にそうなのでしょうか?
この記事では、2025年5月22日時点で実施した**複数のAIによるファクトチェック(ChatGPT-4、Grokなど)**の結果をもとに、生成AIがC言語にどこまで対応できるのかを、現実的な視点で詳しく検証していきます。
1. コードの文脈を理解するのが難しい
C言語は高い自由度を持つ言語です。たとえば、次のようなコードに出会ったとき、AIは意味を正確に捉えるのが困難です。
char *p = malloc(256);
if (!p) return -1;
このコードの目的は「メモリ確保とNULLチェック」ですが、「どのようなタイミングで解放されるのか」「再利用はあるのか」といった意図や設計の背景までは推論できません。
特に、
- コメントが少ない
- 関数名や変数名が曖昧
- コーディングスタイルが一定でない
こうしたコードに対しては、AIが誤ったリファクタリングを提案することもあります。
2. 大規模なコードベースの解析は苦手
ChatGPT-4では最大128Kトークンのコンテキストが扱えますが、それでもC言語の中〜大規模プロジェクトには対応しきれない場合があります。
特に、
- 条件付きコンパイル(
#ifdef
) - ヘッダファイルの多重依存
- マクロによる動的コード構築
これらが絡むと、AIは構造の全貌を掴みきれず、誤った提案をしてしまう可能性が高くなります。
それでもAIが得意なこと
1. 単機能・短文の関数の改善
たとえば以下のような指示は、非常に良い結果を生みます。
- 「この関数の処理速度を改善したい」
- 「NULLチェックを入れて例外処理を強化して」
- 「再帰をループに変えて最適化して」
2. 可読性の向上や命名の見直し
関数名や変数名の改善、コメントの自動生成など、プログラムの見た目を整える作業には抜群の効果を発揮します。
int f(char* s) {
while(s) { if(s == 'a') return 1;
s++;
}
return 0;
}
これを、
int containsCharacterA(char* inputString) {
while(inputString) { if(inputString == 'a') return 1;
inputString++;
}
return 0;
}
のように書き換える提案はAIが得意とする分野です。
テストと実行は人間の責任
生成AIはあくまで「静的な生成・解析ツール」であり、動作確認(コンパイル・ビルド・実行)は行いません。
そのため、以下は必ず人間が担うべきプロセスです。
- コードの論理チェック
- メモリリークやセグメンテーション違反の確認
- OSやビルド環境との整合性検証
実際の使いどころと注意点
おすすめの用途
- 小規模なリファクタリング
- 命名ルールの統一
- 初学者へのサンプル提示
注意が必要なケース
- ハードウェア制御を含むコード
- リアルタイム処理(割り込み処理など)
- C++との混在コードベース
まとめ:AIは「弱い」のではなく「万能ではない」
2025年現在の技術水準で言えば、生成AIはC言語の改良に十分実用レベルで使える段階にあります。
ただし、それは「補助ツールとして」という意味です。
- 構造が明確なコードなら高精度
- 人間の指示が具体的なら正確
- ただし意図を読み取らせるには限界あり
このように、AIの特性を理解し、得意な部分は積極的に使い、不得意な部分は人間がカバーする。それが、生成AI時代の賢い開発の在り方だといえるでしょう。
補足情報:ファクトチェック日とツール一覧(2025年5月22日 実施)
- ChatGPT-4(OpenAI)
- Grok(xAI)
- GitHub Copilot(Microsoft)
- CodeLlama(Meta)
- Stack Overflow、GitHub Issues、開発者ブログからの事例調査
今後に向けて
AIによるコーディング支援は日進月歩で進化しています。C言語のような古典的な言語にも対応できる領域が徐々に広がっており、今後はプロジェクト全体の構造を把握して改良提案するAIも登場するかもしれません。
今はまだ、AIと開発者が補完し合う時代です。うまく使いこなすことで、開発効率は大きく向上します。ぜひ、あなたのプロジェクトでもAIの力を活用してみてください。